第82回系外惑星系セミナー


交通案内

※都内・近郊の方は、直接お越しくださるようお願い致します。

   
日時 2013年7月11日(木) 17:00-19:00
場所 東京工業大学 石川台6号館404B
TV会議接続会議室番号:
スケジュール 17:00-18:00 Shoji Ueta/上田翔士 (Tokyo Tech)
18:10-19:10 Yasuto Takahashi/高橋康人 (Hokkaido Univ.)
講演順が入れ替わる場合もあります

「氷に覆われた系外地球型惑星の表面のH2O層の構造」
17:00-18:00 Shoji Ueta/上田翔士 (Tokyo Tech)
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系外地球型惑星と思われる天体や宇宙空間を漂う浮遊惑星が発見されている昨今、液体の水を保持する地球型惑星が存在するのかどうかということは、生命居住可能性という点からも非常に重要なテーマである。そういった状況の中で、表面が全球凍結しているが氷の内側が惑星内部からの地熱によって溶けて、表面が氷によって覆われた海(内部海)が出来ることが分かっている。本研究では、惑星内部からの熱フラックスによって惑星進化のタイムスケールで内部海を保持する系外地球型惑星・浮遊地球型惑星について議論した。先行研究であるTajika (2008) の手法を応用することで、新たに惑星表面の水の量・放射性熱源の量の依存性も調べた。また、高圧下における氷(高圧氷)の影響を考慮し、氷に覆われた地球型惑星の表面のH2O層の構造の推定を行った。本研究により、1AUに位置する1地球質量の惑星は地球の水量の0.6-25倍の水を保持する場合に内部海を保持し、25倍以上の水を保持する場合は内部海の底に高圧氷層が出現することが分かった。高圧氷層が存在しない内部海を地球型惑星が保持するという条件に対して、惑星の水の量と惑星質量が与える制約は大きく、また、内部海の底の高圧氷層は惑星の生命居住可能性に影響を与える可能性がある。
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「木星大気の放射対流平衡構造:系外惑星の大気モデリングに向けて」
18:10-19:10 Yasuto Takahashi/高橋康人 (Hokkaido Univ.)
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木星は全球が雲で覆われており、この雲の存在は大気の熱的構造や観測されるスペクトルに大きな影響を与えている。しかしながら雲の形成過程については、雲頂下の観測が困難なこともあって不明な点が多い。木星のようにH2に富む大気を持つ惑星は太陽系外でも多く見つかっており、それらの惑星の大気を観測的に明らかにする上でも、雲形成と大気構造、および放射スペクトルの関係性を明らかにしておくことは重要であると言える。  熱力学計算によれば、木星にはそれぞれ異なる成分からなる3つの雲層の存在が予想されている。Sugiyama et al. (2011, 2013) は雲微物理と流体力学を用いた雲対流計算を行い、積乱雲が間欠的に発達し、全雲層を貫いて対流圏界面に達するような鉛直構造を持つことを示した。ただし彼らの計算では放射過程は解いておらず、対流運動を駆動する放射強制についてはガリレオプローブの観測(Sromovsky et al. (1998) )を基に単純化したモデルを与えている。  本発表では、開発中の木星型惑星大気の放射伝達モデルを用い、木星大気の放射対流平衡構造を求め、これに基づいて木星大気の放射特性と雲層形成について考察を行う。平衡構造計算から、木星の雲頂をなすNH3の凝結は、対流圏界面を超えて成層圏下部においても生じるものと見られる。このことは、惑星アルベドに影響する雲頂の構造を求めるためには、対流雲だけでなく成層圏雲のモデル化も必要であることを示唆する。また、求められた放射冷却率分布から、雲対流を駆動する放射強制は、既存モデルよりも狭い高度範囲に集中することも明らかになってきた。これらを踏まえ、他の惑星のモデリングへの応用についても議論したい。
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