第61回系外惑星系セミナー


交通案内

※都内・近郊の方は、直接お越しくださるようお願い致します。

   
日時 2010年3月4日(木) 16:30-
場所 東京大学 理学部1号館839号室
TV会議接続
スケジュール 16:30-17:30
17:40-18:40
講演順が入れ替わる場合もあります

実験室分光から読み取るダストの描像 -シリケイトの結晶性および形状・凝集-
今井 悠太さん(大阪大学)
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星周領域や星間領域に存在するダストの性質は、赤外天文観測と室内分光実験の比較によ り推定され、晩期星や若い星の星周領域において結晶質シリケイトの存在が確認されてい る。赤外線吸収スペクトルは、これらの鉱物の化学組成・温度だけでなく、結晶性や粒子 の形状・凝集状態などの影響を受ける。ダストの形成・進化過程における物理・化学条件 を詳細に推定するためには、化学組成や温度だけでなく、その結晶性や粒子形状・凝集の 依存性に着目した分光実験による測定データが必要である。 本研究では、結晶性や形状・凝集状態を制御した試料を作成し、赤外吸収におけるこれら の影響について実験的に調べた。その結果、結晶の格子歪みがスペクトルのブロードニン グに影響を及ぼすことがわかった。また、粒子の形状・凝集状態に応じて、赤外吸収スペ クトルのピーク位置・強度・半値幅が系統的に変化することがわかった。これらの結果と 光学定数を用いたモデル計算の結果とを比較することで、赤外吸収における形状・凝集の 効果について考察した。また、観測のスペクトルと対応させることで、晩期星の星周にお いて球形のフォルステライトのダストの存在が示唆され、ガスからの非晶質シリケイトの 凝縮と加熱による結晶化が起こっていることが推定される。
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地球型惑星の進化とリソスフェアのダイナミックス
小河 正基さん(東京大学)
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地球型惑星のマントルがどのように進化するかは、リソスフェアのダイ ナミックスに強く依存する。火星や月のように、リソスフェアが固くて 不動の蓋(スタグナント・リッド・レジーム)として振る舞う場合、放 射性元素に富む地殻のマントルへのリサイクルは限られる。このような 惑星では、マントルの内部熱源としての放射性元素は、一方的にプルー ムによる火成活動により地殻に吸い取られ、マントルの温度はソリダス 以下に押さえられ、プルームによる火成活動は時代とともに一方的に減 衰していく。これに応じて、マントルは、マグマオーシャンにより形成 された化学成層した状態から、より均質な状態へ単調に緩和していく。 これと対照的に、プレートテクトニクスの起こっている地球では、地殻 は効率よくマントルにリサイクルし、その結果マントルは2段階で進化 する。初期の放射性元素が豊富に有った時代には、マントルにリサイク ルした地殻物質は、温度が急速に上昇することによる熱的浮力のため、 数億年程度の時間スケールで間欠的に激しいマントル上昇流(バースト) を引き起こす。このため、プレート運動はカオティックな様相を示す。 しかし、放射性元素による内部加熱が減衰するとともに、そのようなバー ストは沈静化し、リサイクルした地殻物質を多く含む巨大なかたまり (以下スーパーパイルと呼ぶ)がマントル深部に形成される。このスー パーパイルからは、十億年スケールで間欠的にプルームが上昇し、ホッ トスポット型の火山活動を引き起こす。また、バーストが沈静化したた め、プレート運動は今日我々が見るような秩序だったものとなる。この 枠組みの中で理解が困難な惑星は金星の進化である。金星は現在スタグ ナント・リッド・レジームに属しており、地殻のマントルへのリサイク ルは限定的と思われるにもかかわらず、その表面年齢は若く、最近リサー フェシングを起こしたと考えられている。予備的な数値シミュレーショ ンによると、リソスフェアがスタグナントリッドとして振る舞う限り、 リサーフェシングを引き起こすような大規模なマントルオーバーターン は、マグマオーシャンの消失後一時的にしか起こらない。このことから、 金星では、例えばリサーフェシングの際に大規模な地殻のリサイクリン グが起こっているのではないかと示唆される。
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