第71回系外惑星系セミナー


交通案内

※都内・近郊の方は、直接お越しくださるようお願い致します。

   
日時 2011年07月07日(木) 16:10-
場所 国立天文台 すばる棟2階TV会議室
TV会議接続会議室番号:
スケジュール 16:10-17:10 葛原昌幸さん(東京大学)
17:30-18:30 谷川享行さん(CPS/北大低温研)

すばる望遠鏡によるsubstellar companion の探査: へびつかい座分子雲の連星 SR12周囲でのsubstellar companionの検出
葛原昌幸さん(東京大学)
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系外惑星や褐色矮星伴星(併せて substellar companion)の直接撮像探査は 天文観測のための装置や技術の発達によって可能になってきた (e.g., Marois et al. 2008)。特に、若い星周囲におけるsubstellar companion の探査に対して、直接撮像観測は有効な方法である。それらによって得られた結果は、 星・惑星形成理論を発展させるうえで極めて有益な手掛かりになるだろう。 我々は、すばる望遠鏡を用いて以前より星形成領域においてsubstellar companion を探査してきた。そして、へびつかい座ρ分子雲に存在する 若い連星 SR12AB の周囲においてsubstellar companion (SR12C)の検出に成功した。 その質量は0.013+/-0.007 Msun であるが、中心星との離角はおよそ 8.7"(=1100AU)離れている。このように、SR12Cは惑星と褐色矮星の 境界の質量をもつが、中心星に対する距離は非常に大きく、その距離は過去に検出された 同様の惑星候補天体と比較しても大きく非常にユニークな天体であることがわかる。 本発表では、主にSR12Cの観測とその結果の分析方法、そしてSR12Cの特徴について議論する。 また最後に、時間の許す限り、すばる望遠鏡を用いて現在行っている太陽近傍の 若い運動星団に属する星の周囲における巨大ガス惑星の直接撮像探査について紹介する。
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周惑星円盤の形成:ガス惑星へのガス降着流の解析
谷川享行さん(CPS/北大低温研)
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巨大ガス惑星の周りに存在する衛星系のほとんどは規則衛星、つまり惑星の赤道 面付近をほぼ円軌道で回っていることから、衛星は惑星周りにかつて存在してい た周惑星円盤(=原始衛星系円盤)の中で形成したと考えられている。また、近 年の数値流体シミュレーションにより、ガス惑星が原始惑星系円盤ガスの降着に よって成長する時に、必然的に惑星の周りにガス円盤が形成されることが明らか になってきた。しかし、これらの研究は衛星形成に主眼を置いていないために、 周惑星円盤構造に対する詳しい解析はあまり行われていない。そこで本研究では、 ガス惑星形成時の惑星へのガス降着流を数値流体計算により高解像度で求め、周 惑星円盤の構造および形成過程に着目して流れ場を詳しく解析した。 衛星形成は惑星半径の数十倍(惑星の軌道半径の数百分の一)以内という狭い領 域で主に行われる。その領域の流れ場を十分な解像度で得るために、多重格子法 と局所近似回転座標系を併用することで惑星近傍の解像度を飛躍的に高めた。計 算により得られた流れ場を解析した主な結果は以下の3点にまとめられる。(1) 周惑星円盤中の中心面付近のガスは広い領域に渡って外側へ移動している。(2) 惑星への実質的なガス降着は、周惑星円盤を経由せず上空から周惑星円盤外縁部 を飛び越えて一気に惑星近傍の周惑星円盤へと落下するパスが主な降着経路となっ ている。これは、通常の降着円盤の描像(周惑星円盤内部を徐々に内側へ移動) とは大きく異なっている。(3) 周惑星円盤へ供給する質量・角運動量フラックス を惑星からの距離の関数として求め、周惑星円盤構造・進化を求めるための境界 条件を決定した。以上の結果を元に、衛星形成環境や形成シナリオについて議論 する予定である。
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