第79回系外惑星系セミナー


交通案内

※都内・近郊の方は、直接お越しくださるようお願い致します。

   
日時 2013年2月7日(木) 13:30-16:00
場所 国立天文台三鷹すばる棟2階TV会議室
TV会議接続会議室番号:
スケジュール 13:30-14:30 眞山 聡さん (総合研究大学院大学 学融合推進センター)
14:40-15:40 金川和弘さん(北海道大学理学部)
講演順が入れ替わる場合もあります

「原始惑星系円盤におけるinner holeと腕構造の検出」
13:30-14:30 眞山 聡さん (総合研究大学院大学 学融合推進センター)
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遷移円盤は、光学的に厚い原始惑星系円盤から光学的に薄いデブリ円盤へと 遷移している進化段階にある円盤と考えられている。遷移円盤ではダストが 外側では豊富に残りつつも、内側では消失しつつあり、それが円盤内の穴(空洞) として観測される。穴の形成メカニズムは惑星起因説を含め諸説あるが、 未だ解明されていない。

2MASS J16042165-2130284は距離145 pcのUpper Sco星形成領域に位置し、 推定年齢は370万年の太陽質量程度の若い天体で、過去のSEDを用いた研究で 遷移円盤を保有することが示唆されていた。そこで我々はSEEDS(すばる望遠鏡 系外惑星円盤探査プロジェクト)の一環で、すばる望遠鏡に赤外線カメラHiCIAO と補償光学AO188を搭載させ、遷移円盤詳細構造の直接検出を狙い、本天体の H-band(1.6$\mu$m)近赤外撮像観測を行った。観測の結果、FWHM0''.07のイメージ が取得された。得られた主な結果の内、講演では下記について紹介する。 1.中心星を取り囲む、inner holeを宿した円盤を検出した。得られた円盤パラ メータは半長軸が63AU、半短軸が62AU、PA(Position Angle)が-14度, inclinationが10度であるほぼface-ON円盤であった。inner holeの幅と深さは、 惑星と円盤の相互作用理論で推測されている「伴星が剥ぎとる穴」と一致して いることから、中心星から40-50AUの領域に埋もれて隠された伴星があること、 さらにその伴星質量は惑星質量程度であることを示唆した。 2.円盤内縁部のPAが85度付近に表面輝度が暗いdip構造が検出され、本天体が 非対称型構造円盤を保有していることが明らかになった。 3.inner holeを跨いで内部に伸びる「腕」構造を検出した。「腕」は形状と巻き 込んでいる角度(pitch angle)について、惑星と円盤の相互作用理論で予想される 結果と似ていることから、腕はその近傍で生まれつつある惑星によって生成 された密度波であることを示唆した。
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「円盤回転則変化を考慮した惑星による円盤ギャップ形成」
14:40-15:40 金川和弘さん(北海道大学理学部)
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原始惑星系円盤内で惑星が十分大きく成長すると、惑星重力により円盤ガスをは ねのけることで、惑星軌道付近でガス密度が減少した、いわゆるギャップが形成 される。 さらに惑星が重くなりギャップが深くなると、ギャップを横切る惑星軌道内側へ の円盤ガス降着が停止し、その結果、内側でガス密度が大幅に減少したインナー ホールがつくられると考えられている。 円盤のギャップ構造やインナーホールは最近の円盤観測により多く発見されてい るが、これらの観測結果とそこに存在するであろう惑星とを直結する定量的な理 論モデルは未だ存在していない。 本研究は、密度波理論をもとにした惑星円盤重力相互作用のモデルを用いて1次 元粘性円盤進化の方程式を解くことで、惑星によるインナーホール及びギャップ 形成モデルの構築を目指している。

ギャップ形成に伴い円盤回転速度はケプラー回転からずれ、その差は音速程度に もなるにもかかわらず、従来のギャップ形成モデルではこのずれは無視されていた。 しかしこの速度のずれは、円盤中の粘性角運動量輸送を大きく変えるので考慮す る必要がある。 本研究では、円盤回転速度とギャップ形成の方程式を連立させ解いた。得られた 解より、円盤回転速度変化の効果はギャップを浅くすることが分かった。 ある程度深いギャップにおいては、ギャップ内の面密度を何倍も上昇させる効果 がある。 これは、ギャップを横切る円盤ガス降着や惑星へのガス降着に影響を与えるであ ろう。 さらに、深いギャップにおいては、回転円盤の安定性を決めるレイリー条件が破 れることも明らかになった。 これに伴う不安定によりさらにギャップはより浅くなるであろう。 また、本モデルで得られたギャップ構造と数値流体計算結果との比較についても 紹介したい。
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