系外惑星の直接観測?
(アストロアーツの掲載予定?記事を改変)

井田 茂

2005年春、系外惑星の直接観測成功(?)との報道がいくつも流れた。 いま、系外惑星の直接観測に向けての激しいデッドヒートが 国際的に繰り広げられていている。プレスリリースはどうしても 大げさになり、系外惑星の直接観測成功と報じているが、 実際はまだ確証は得られていない。しかし、明日にでも、本当に 直接観測成功が報じられる状況にあることは確かである。 しばらくは、このデッドヒートから目が離せない。

● スピッツァー望遠鏡による HD209458b と TrES-1 の観測

この観測は、惑星からの光を恒星から空間的に分離して とらえるという、本来の意味での「直接観測」ではないことに 注意がいる。

これらの惑星はトランジットを起こす系外惑星として以前から 知られており、そのトランジットを利用すると、惑星の 大気に関する情報が得られる。これまでにも、ハッブル望遠鏡を 使って、食のときとそれ以外のときの恒星からのライン放射の 強度の差をとって、惑星大気の Na, C, O の成分の量についての 情報が取り出されていた。食のときには惑星大気の透過光が 混ざるので、差をとれば、その成分がとりだせる。

今回のスピッツァー望遠鏡の観測は、惑星が裏に隠れたときと それ以外ときの赤外線放射の差をとるという、同様の発想の観測である。 惑星が裏に隠れたときは完全に恒星だけの放射だが、 表に出ているときは、惑星の赤外線放射がまざる。

赤外線放射の連続波成分がわかれば、惑星の温度がわかるのだが、 そのためには、多くの異なる波長で観測し、そのスペクトルをを 黒体輻射でフィットするという作業が必要となる。だが、今回の スピッツァー望遠鏡の観測は1波長のものなので、正確な温度の 見積もりはできない。原論文でも、1波長での温度推定の不定性を 述べている。実際、今回の推定値は常識的な値よりかなり低く、 今回の観測波長にはラインの影響があるのではないかと著者たちも 述べている。

今後の多波長での観測に期待したい。

● VLTによる GQ Lup A b の観測

この観測は、本来の意味での「直接観測」であるが、 まだ「惑星候補天体」であって、「惑星」であるという確証は 得られていない。

確証を得るのが難しいのは、この天体が形成後100万年程度だろうと いうことである(中心天体の年齢からの類推)。形成直後は 惑星であっても、自身の収縮エネルギーで明るく輝くが、 その輝度の推定が非常に難しく、結果として、観測輝度からの 天体質量の見積もりが難しくなる。 原論文でも、天体質量は木星質量の1〜42倍と、 幅広く推定している。実際は木星質量の20倍以上などと なると、褐色矮星伴星だということになる。 そのため、原論文では、著者たちは注意深く、"sub-stellar companion"と 呼んでいて、決して"planet"とは呼んでいない。

現時点では「系外惑星の直接観測成功」とはまだ言えないが、 今後の詳細観測で天体質量の推定値が絞られて、木星の10倍以下ともなれば、 「惑星」ということになる可能性はある。 今後の詳細な観測を待ちたい。