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問い合わせ先:
佐藤文衛(国立天文台・岡山天体物理観測所・研究員) Tel 0865-44-2155(代), Email satobn@oao.nao.ac.jp
井田茂(東工大・理学部地球惑星科学科・助教授) Tel 03-5734-2620(直), Email ida@geo.titech.ac.jp
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超巨大コアを持つ灼熱惑星の発見 |
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国立天文台 2005年7月1日発表
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国立天文台、神戸大、東工大、サンフランシスコ州立大などの研究者からなる、
日米合同観測チームは、
国際的観測計画(N2Kプロジェクト -- 注1)の一環として、
すばる望遠鏡やケック望遠鏡などによる観測(注2)を行ない、
すばるによる初の系外惑星(太陽系外の惑星)を発見しました(注3)。
その後、この惑星は超巨大コアを持つ
驚愕の惑星であることがわかりました(注4)。
この発見は、木星のようなガス惑星がどのようにして形成されたのかを
決定づけると同時に、新たな大きな謎を投げかけています。

惑星 HD149026 b が恒星 HD149026 の前を通過しているところの想像図
((c) Lynette Cook)。
黄色いのは恒星で、黒く影になっているのが惑星を表します。
中心星に近く、温度が高いため、惑星大気が流れ出て尾を引いている可能性があります。  
[高精度画像はココ]
1995年にぺガサス座51番星で初めて系外惑星が発見されて以来、現在までに150個を
越える系外惑星が発見されていますが、一般にそれらの惑星の内部構造を
知ることは困難です。最も多用され、今回のすばるの観測でも
用いられた、(惑星の引力による恒星のふらつきを調べる)
ドップラー遷移法だけでは、惑星質量と軌道しかわかりません。
「例外は、この惑星のようにたまたま軌道面の向きがよくて
恒星面通過をおこす場合です。その通過の様子から
惑星の直径や密度、コアを持っているかどうか、そして大気の組成まで
推定することができるのです。(N2Kプロジェクトのリーダーの
サンフランシスコ州立大・デボラ・フィッシャー博士)」
この惑星は、太陽型の恒星(HD149026)を非常に小さな軌道半径で
周回しています(周期は2.87日 -- 注5)。
この惑星の質量は土星よりやや大きい(1.2倍)
のですが、直径は土星よりひとまわり小さい(0.86倍)ことがわかりました。
つまり密度が高いのです(土星の約2倍)。
ピーター・ボーデンハイマー博士(カリフォルニア大)の計算によると、
この密度になるには、この惑星がガスばかりで
出来ているのではなく、地球の全質量の70倍くらいの巨大な固体(岩石/氷)の
コアを持っていなければなりません。
「理論家にとって、この惑星の発見はぺガサス座51番星以来の重要なものだ。
コア質量は理論的には地球質量の30倍が限界とされていて、
木星、土星ではもっと小さい(注6)。
木星型でもない、地球型でもない、新種の惑星と言ってもいいかもしれない(注7)。
(東工大・井田茂博士)」

惑星 HD149026 b と 木星の内部構造の比較 ((c) Greg Laughlin)。
中心の濃いグレーの部分が固体のコアを表します。
一番薄い色の部分は、水素・ヘリウムのガスで、
中間色の部分は水素・ヘリウムが高圧のため金属化しています。
木星の固体コアの質量は地球質量の10倍以下(土星のコアは地球質量の8〜22倍)。
それに対して、HD149026b のコアは地球質量の70倍と推定され、
いかに大きいかがわかります。
木星や土星のようなガス惑星の形成理論には2つあります。
ガス円盤が直接分裂するというものと、その円盤内で先に形成された
岩石や氷のコアに円盤ガスが付け加わるというもの(コア集積モデル)です
[惑星形成過程の概略についてはココ]。
アリゾナ・フェアボーン天文台でこの惑星の恒星面通過の検出に成功した
グレック・ヘンリー博士(テネシー州立大)は
「この惑星の発見は、コア集積モデルが正しいことを示すだろう。」と語ります。
グレック・ラフリン博士(カリフォルニア大)も
「この発見で、ガス惑星形成モデルの雌雄は決しただろう。
N2Kメンバーは太平洋を越えてメールで、巨大コアを説明するための、
いろんなアイデアを出し合った。」
ひとつのアイデアは、(なんとか常識の範囲内に入る)地球質量の
35倍のコアを持ったガス惑星2つが衝突して大きなコアが残ったというものです。
「型破りの系外惑星にはなれてきていたが、
それにしてもこんな惑星は想定外だった。我々は
このN2Kプロジェクトでもっともっとすごい発見をしていくだろう。
そのことによって常識が覆されながら、どうやって惑星系ができるのか、
どんな多様な惑星系があるのか、太陽系は一般なのか特殊なのか、
というようなことが明らかになっていくと思う。」
と、今回のすばる望遠鏡での観測チームのリーダーの
佐藤文衛博士(国立天文台岡山)は今後に向けて意気込みを語っています。
論文は米国天文学会誌 "Astrophysical Journal" に発表予定です(注8)。

惑星 HD149026 b の想像図 ((c) Greg Laughlin & James Cho)。
白い三日月状の部分は中心星の光が当たっているところです。
影の部分も、摂氏1200度というような高温になっていると予想されるため、
赤く輝いています。
惑星大気の乱流状の模様は、ジェームス・チョウ(カーネギー研究所)
によるコンピュータ・シミュレーションの結果を参考にしています。
● このページの画像の使用について: 教育・普及の目的のためならば、
画像の二次使用を許可しますが、クレジットは必ずつけてください。
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注釈 |
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(注1) N2Kプロジェクト
とは、日本、アメリカ、チリの天文学者による
系外惑星観測計画で、すばる、ケック、マゼランなどの8メートル以上の
最大口径地上望遠鏡を使って、これまでは観測ができなかった、
新しい2000個の恒星 (Next 2000(2K))を観測して、数十個以上の
ホット・ジュピター(軌道半径が小さい系外惑星)を視線速度の
ドップラー遷移を使って発見しようとするものです。
数十個以上のホット・ジュピターが見つかれば、確率的に数個の
恒星面通過(トランジット)するものがあるはずです。
比較的明るい(10等級以下)の恒星なら、恒星面通過の様子から
惑星の内部構造や大気成分などの重大な情報が得られます。そのため、
トランジットのフォローアップ観測の態勢も整えています。
日本側参加メンバーは、佐藤文衛(国立天文台岡山・研究員)、
井田茂(東工大理学部地球惑星科学科・助教授)、
豊田英里(神戸大理学部地球惑星科学科・大学院生)。
(注2)昨年7,8月に、すばる望遠鏡 によって、
ヘラクレス座の恒星 HD149026
からの光が周期的にドップラー遷移をおこしていることが
観測されました。これは、この恒星が惑星(HD149026 b)をもっていて、その惑星の
公転の反作用で恒星が周期的に運動していて、地球から見れば周期的に
近づいたり遠ざかったりしていることを示します。
その後のケック望遠鏡による
データ追加により惑星の軌道が確定しました。
そして、アリゾナ・フェアボーン天文台にて、
恒星光の減光が検出され、
この惑星が恒星面通過(トランジット)
することが判明しました。
その減光量から、惑星の断面積が決まり、密度がわかりました。
視線速度の変化の観測(すばる&ケック)     
惑星通過による恒星の明るさの変化(フェアボーン)
[この二つのグラフの二次使用は避けてください]
(注3)恒星 HD149026はスペクトル型G0IVで、
地球から260光年ほど離れた太陽型の恒星で、ヘルクレス座にある。
質量は太陽の1.3倍で、実視等級は8.15等。
惑星(HD149026 b)は、土星の1.2倍の質量(地球質量の約115倍)で、
土星の0.86倍の半径(地球の8.1倍)を持つ。
密度は土星の2倍。
軌道は軌道半径0.046天文単位の円軌道で、
視線からの傾きは85度。
(注4)発見された惑星は地球質量の70倍もの巨大な固体コアを
持っていると推定されています。ここで言う「固体コア」は地球で言えば、
固体惑星である地球全体に対応します(地球でのコア・マントルのコアではありません)。
ガス惑星の形成モデルには2つあります
[惑星形成過程の概略についてはココ]。
(1) 標準モデル = 地球の全質量の10〜20倍の固体コアにガスがふりつもる。
(2) 重力不安定モデル = 原始惑星系円盤が分裂して惑星になる
モデル(2)では固体コアはできないので、
本発見は(2)重力不安定モデルを否定します。
一方、(1)標準モデルでも新たな謎を提起しています。
標準モデルでは、コア質量が地球の全質量の10倍程度を越えると、
原始惑星系円盤ガスが暴走的に流れ込んで、地球質量の100倍を
越えるようなガス惑星が比較的短時間で形成されます。
円盤ガスの流入が始まってから、落ち込んだ微惑星は水素・ヘリウムの
外層部に融けこみ、コア質量は増大しません。
つまり、通常、コア質量は地球質量の10〜20倍程度と
考えられます。太陽系の木星、土星(注6)、これまでに
密度が推定された系外惑星は、その程度のコアを持っていると推定されます。
太陽系の天王星、海王星も地球質量の15倍程度のコアを持っています。
天王星、海王星では大規模なガス流入はおこっていませんが、これはコアの成長が遅く、
円盤ガスが先に散逸してしまったからと考えられます。今回発見された
惑星は中心星のそばにおり、これは円盤との相互作用で現在の位置に移動したと
考えられるので、形成時に円盤ガスは十分あったはずです。
なぜ、そのような巨大なコアになるまで、円盤ガスの流入がおこらなかった
のでしょうか? また、そもそもそれだけの巨大コアはどうしてできたのでしょうか?
大きな謎です。
(注5)この惑星はちょうど(欧米流の)週末で一公転します。
金曜の正午に出発したところに月曜の朝9時に戻ってきます。
7/1(金)〜7/4(月)の週末の動きの図解は
[ここ (c) Greg Laughlin]にあります。
(注6)木星の総質量は 318 M_E(M_Eは地球質量 = 6 x 10^27 g)で、
コア質量は 10 M_E以下と推定されています。
土星の総質量は 95 M_E で、
コア質量は 8〜22 M_E と推定されています。
コア質量の推定はボイジャーなどの探査機による重力場測定によるもので、
不定性が大きくなっています。しかし、その不定性を考慮しても、
30 M_E より大きいということは有りえません。
(注7)これまで知られている惑星は、地球質量の10〜20倍の固体コアのまわりに
水素・ヘリウムのガス層を持った「木星型」(木星型惑星は、さらに、
ガス層が大半の"巨大ガス惑星"と、固体(氷)コアが大半の"巨大氷惑星"に
分けられる)か、
地球質量の10倍以下の小型で、固体でほとんどができた「地球型」惑星に
分類されてきました。
今回見つかった惑星は
「木星型」にも「地球型」にも属さない新種の惑星と言ってもいいかもしれません。
(注8)論文タイトル: "The N2K Consorsium. II. A Transiting Hot Saturn Around HD149026 With a Large Dense Core"
論文著者:Sato, B., D. Fischer, G. Henry, G. Laughlin, ... Shigeru Ida, Eri Toyota, ... (計21名)
論文掲載予定誌: Astrophysical Journal
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インサイド・ストーリー(文責:井田茂) |
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この惑星が超巨大なコアを持つことがわかったのは、
ドップラー遷移による恒星の視線速度変化の観測に加えて、
恒星面通過(トランジット)の検出ができたことによるものだが、
この重大なトランジット検出は、
実は日本のアマチュアがなし得ていたかもしれなかった。
この惑星の軌道が決定できたのはGW前だった。
軌道決定できれば、トランジットするとしたらいつするかの予測ができる。
軌道決定直後から3回続いての検出のチャンスは
ちょうど日本の夜におこることになっていた。アメリカでは昼にあたり観測できない。
井田は、すばるで新惑星の候補が見つかったら、すぐに
トランジットのフォローアップ観測ができるように、
日本のアマチュア天文家を中心とした日本トランジット・ネットワークを組織していた。
井田は早速、ネットワークにデータを流した。
確率的に実際にトランジットがおこるのは5〜10%程度と予測され、
それほどの緊迫感もなく、GWの最中に日本各地でHD149026に望遠鏡が向けられた。
天気は必ずしも悪くはなかったのだが、恒星面通過の時間だけ雲がでてしまい。
GW中の3度のチャンス、誰も観測ができなかった。
GW後、次のチャンスはアメリカの夜の時間に移行した。そのチャンスに、
アリゾナ・フェアボーン天文台で、グレック・ヘンリー研究員が
恒星面通過の兆候を捉えた。いっきに緊迫した。
その報告を聞いて、井田はすばる観測チームとしては喜んだ反面、
なんとかアリゾナではその後雲って、日本で最終確認観測が成功しないかと願った。
だが、次のアリゾナでのチャンスも晴れた。
ついに、グレック・ヘンリー研究員が恒星面通過を確定した。
本当に惜しかった。日本のアマチュアが世紀の大発見をするところだった。
しかし、すばるで発見された最初の惑星がトランジットしていたというだけで、
非常な好運である。それ以上を望むのはぜいたくかもしれない...
実は、すばる望遠鏡では、まだいくつも新惑星の候補が見つかっている。
次を期待しよう。
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