第210回  
日時 平成12年1 月25日(火)17:00より(火曜日です。ご注意下さい)
場所 東京工業大学石川台2号館315号室(地球惑星科学教室会議室)
講 演 者: 兼岡一郎(東京大学地震研究所)
講演題目: 希ガス同位体に基づいたマントルの化学的構造と物質循環への制約
内容: 希ガス同位体は、地球形成時にとりこまれたと考えられる始源的同位体の他に、地球内部での放射壊変や核反応の結果生じた放射性起源同位体を含み、それらを組み合わせた同位体比は時間とともに変化する。
地殻や上部マントルでの希ガス存在料は非常に少ないのに対し、大気や海水中の同位対比はきわめて一様で地表環境では圧倒的な存在量を示す。希ガスは化学反応には関与せず、その変化は物理化学的過程のみを反映すると考えて良い。He、Ne、Ar.Kr.Xeなどの間では、Heのような軽い希ガスは非常に移動しやすいのに対し、Xeなどは固体元素などに比べても決して移動しやすいとは言い難い。しかし大規模な火成作用などの際には、大気中に脱ガスするというのが固体元素との決定的な違いである。
 マントル内の同位体を代表するようなMORBやOIBなどの希ガス同位対比に関するシステマテックスを調べると、始源的な希ガスに関して両者には画然とした差が見られる。上述した希ガスの特性を考慮すると、マントルの化学的構造や物質環境に関してSr、Nd、Pbなどの同位体比よりもさらに厳しい制約が与えられることを述べる。