第211回 | |
日時 | 平成12年5 月17日(水)17:00より |
場所 | 東京工業大学石川台2号館315号室(地球惑星科学教室会議室) |
講 演 者: | 桜庭 中(東京大学地球惑星科学専攻) |
講演題目: | 地球ダイナモの数値シミュレーションに向けて |
内容: | 地球のコア内で起こっているさまざまな物理現象,
たとえば流体コア内の熱対流運動やそれに伴う地磁気の生成作用(ダイナモ作用)などを,
数値シミュレーションによって理解するのがわたしの研究の目的である。しかし,
たとえば天気予報のように実際の地球のパラメーターに則して現実的な数値シミュレーションができているかというと,
いまのところそうではない。それはコアが地下 3000km
もの深さに位置していて観測が困難であることや,
特徴的な時間スケールが比較的長いためにまだ観測データの蓄積が十分でないことなどに加えて,
そもそも今日の計算機の性能では実際のコア内の流体運動や磁場の構造を表現するだけの解像度が得られないからである。 そこでここでは, いったん地球ダイナモの数値シミュレーションをあきらめ, その代わりに地球ダイナモ作用の本質的な物理過程の理解を促進するような数値実験をおこなうことにする。そもそも地球ダイナモ作用にはまだ未知の点がたくさんあるから, これは有効な第一歩といえるだろう。 地球のコア内の流体力学を特徴づけるのは, 地球回転の影響が大きいこと, 流体の電気伝導度が高いので電磁場の影響が大きいこと, そしてコアが球形であること, の三つである。これらの効果をすべてとりいれるべく, 一様な磁場のもとで回転する球殻流体の熱対流問題(マグネトコンベクション)を考える。とくに加える一様磁場の向きを回転軸と平行にする。このような問題を, 線形および非線形の数値計算で解いた。その結果, 加える磁場の強さによって, いくつかの異なる対流状態が存在することがわかった。とくに磁場と回転の二つの効果が同程度になるパラメーター領域では, 高気圧型対流セルの発達や, ポロイダル誘導磁場の卓越などといった特徴的な現象が確認された。またそのような対流状態は, 加える一様磁場がゼロという条件で別途おこなった数値実験(セルフ・コンシステントダイナモ)でも確認できた。 ここで得られた知識をもとに, 今後は地磁気の逆転という現象に焦点をあてた研究をおこなっていくつもりである。そして究極の課題である地球ダイナモの数値シミュレーションに向けた研究もおこなっていきたい。 |