第224回  
日時 平成13年1月31日(水)17:00より
場所 東京工業大学理学部地球惑星科学教室会議室
石川台2号館318号室(場所が変更されております)
講 演 者: 伊東 明彦(宇都宮大学教育学部)
講演題目: 1999年トルコ・イズミット地震前後の地震活動とその意味
内容:   トルコ・北アナトリア断層帯では1939年のエルジンジャン地震以来大地震が続発しており、その震源域は西に向かって系統的に移動していた。このような観点から地震空白域として注目されていた北アナトリア断層帯最西部おいて1999年8月17日午前0時1分(UT)、M7.4のイズミット地震が発生した。我々は1992年以来、無線テレメータを用いた地震観測網IZINETを同地域に展開しており、今回の地震前後の地震活動を詳細にとらえることができた。さらに、地震発生時にちょうど現地調査を実施中であったため、臨時余震観測にも極めて迅速に対応することができた。ここでは、コジャエリ地震前の地震活動、余震分布,それらからわかることなどを報告したい.
 コジャエリ地震発生前7年間のIZINET観測網による観測結果をみると、この地域の地震活動度は一般に非常に低いが,北アナトリア断層帯に沿う幾つかの地域では群発的な地震活動が観測されていた。注目すべきは、1999年コジャエリ地震がこのうちの1つの群発活動のごく近傍で発生したことである。この活動は20年以上前から確認されており,群発地震と大地震の関連に注目していく必要があることを示している.しかし、観測された範囲内では前兆的な地震活動は見出されていない。
 本震発生にともない,地表では最大4mに及ぶ水平右横ずれの地震断層が出現し,また,東経29。2°付近から31。0°付近までのほぼ東西にのびる約150kmの長さにわたって余震が発生した。地表で観測された地震断層は30。7°付近から北東方向に折れ曲がっており、余震活動もこの地表断層に沿って北東方向へ伸びている。また、余震域の西側部分及び南東部分では本震断層からややはずれた地域でも顕著な地震活動が本震によって誘発されたように見える。西側部分では、地表の地震断層はで海に入ってしまいその終端を確認することはできないが、余震活動から推測する限り東経29。2°付近まで本震の破壊が及んだと考えられる。
 イズミット地震の発生により、今後さらに西側のマルマラ海地域において大地震の発生が予想される。この地域にはボアジチ大学カンデリ地震観測所のMARNETと呼ばれる微小地震観測網が設置されているが、ペン書きレコーダによる記録を行っているのみであり、観測体制の強化・質的向上が望まれていた。そこで今回、新たに32chデジタル地震収録装置を開発し、カンデリ観測所との協同のもと、2000年3月よりMARNETにおいて使用を開始した。このシステムの導入により、震源決定精度の向上および処理の高速化が可能になるものと期待される。