第225回 | |
日時 | 平成13年5月16日(水)17:00より |
場所 | 東京工業大学理学部地球惑星科学教室会議室 石川台2号館315号室 |
講 演 者: | 佐々木 晶(東京大学理学系地球惑星科学助教授) |
講演題目: | 宇宙風化作用のシミュレーション実験:小惑星と隕石の"Missing Link"の解明 |
内容: | 「宇宙風化」とは、時間の経過とともに、惑星表面の反射率が低下し
赤味を帯びるとともに吸収帯の深さが変化することをさす言葉である。
宇宙風化は、月の岩石とソイルのスペクトル、小惑星と隕石のスペクトルが
符合しない理由を説明するために、よく引き合いに出されてきた。
微小隕石の衝突や太陽風による照射のためにレゴリス粒子の上に鉄のナノ微粒子が
形成されることが、光学特性の変化の主な原因だと主張されてきた。
我々は微小隕石衝突による加熱シミュレーションするために、
ナノ秒パルスレーザーを鉱物粉末試料に照射した。その結果、反射スペクトルの低下・赤化を
確認した。カンラン石や輝石照射の結果だけでも一部の小惑星の反射スペクトルは
良く説明できる。また、カンラン石の方が輝石よりも変化が大きいことを明らかにした。
これは、実際の小惑星のデータと一致する。さらにパルスレーザー照射を行ったカンラン石試料を
透過型電子顕微鏡で観測した。我々は、カンラン石粒の蒸着した非晶質の縁の内部に、
宇宙風化した月のソイル粒の縁で観測されたものに似た鉄ナノ粒子を見つけた。
太陽風により注入された水素原子による還元は必ずしも必要ではないことが明らかになった。
さらに、普通コンドライトがS型小惑星から生じるとする説が裏づけられ、また小惑星表面が
露出した年代がある程度絞り込める。
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