第226回 | |
日時 | 平成13年5月30日(水)17:00より |
場所 | 東京工業大学理学部地球惑星科学教室会議室 石川台2号館315号室 |
講 演 者: | 阿部 なつ江(Macquarie University) |
講演題目: | 西南日本弧の上部マントル〜下部地殻温度構造 ー深部岩捕獲岩の岩石化学的研究からの一考察ー |
内容: |
火山岩中に包有される深部岩捕獲岩は,我々が普段直接見ることが出来ない地下深
部の物質であり,地下に存在していたときの条件をほぼそのまま我々に伝えてくれる
貴重な試料である.本発表では,上部マントルかんらん岩捕獲岩の記載を中心に,西
南日本弧の地下構造を推定したい. 西南日本弧(中国・四国・九州地方)には,新生代アルカリ玄武岩に包有されるマ ントルかんらん岩捕獲岩産地が8カ所報告されている.一見均質に見える上部マント ルかんらん岩も,産地ごとに異なる岩石学的性質を示す.例えば,地質温度計を用い て求められた平衡温度によって,それらは低温型(950-1050℃)と高温型 (1050-1250℃)に分類される.これらの上部マントル物質はスピネル安定領域から もたらされており,平衡圧力は求められないが,両者ともほぼ同じ深度(30-50km深) で存在していたと考えられる. 一方,中国地方の数カ所からは,下部地殻物質として低温・高圧を示唆するざくろ 石や藍晶石を含むグラニュライトなどが見つかっている(Koyaguchi & Fujii, 1981; Nozaka, 1990; 1997).これらの深部岩試料からは,複数の地温勾配(曲線) が推定される. このように,深部岩捕獲岩の詳細な研究から,中国地方の地下の複雑な島弧発達過 程を検証する. |