第229回  
日時 平成13年7月11日(水)17:00より
場所 東京工業大学理学部地球惑星科学教室会議室
石川台2号館315号室
講 演 者: 吉原 新(東京大学・地球惑星科学)
講演題目: 太古代における地球磁場強度
内容:   地球史における核の進化を考えるためには、地球磁場強度が数億〜数十億年とい うタイムスケールでいかに変動してきたかを知ることが不可欠であり、著しく不 足している太古代や原生代の古地磁気データを蓄積していくことが非常に重要で ある。本研究では、カナダ・Slave地域、ジンバブエ・Belingwe地域、南アフリ カ・Barberton地域、オーストラリア・Pilbara地域で採取された太古代の火山岩 類を用いて、テリエ法による古地球磁場強度測定をおこない、信頼性の高い絶対 値を含む、太古代の磁場強度に関する新たな情報を得ることに成功した。
 Slave地域の貫入岩から得られた結果および現在利用可能な古地磁気データによ れば、20-26億年前の期間における磁場強度は過去10Maと同程度の強度とその振 幅で特徴づけられる。Belingwe地域のコマチアイトから得られた27億年前の磁 場強度は顕生代の磁場強度変動の範囲内にシフトする可能性が高いが、28億年前 頃についてはPilbara地域の洪水玄武岩による結果を含む全てのデータが顕生代 の磁場強度変動の下限に近い値を示している。したがって、本研究で得られた 28〜26億年にかけての変動傾向は、太古代/原生代境界近傍で磁場強度の急増が 見られるというHale(1987)の解釈と矛盾せず、内核の成長開始やマントル対流の オーバーターンによる磁場強度変動のモデル計算結果(Stevenson et al., 1983; Breuer andSpohn, 1995)に対応させることができる。
 太古代初期に関しては、データの不確定性に問題があるものの、Barberton地域 のコマチアイトおよびPilbara地域の枕状玄武岩から得られた磁場強度データは どちらも、約35億年前の磁場強度が顕生代の磁場強度変動の範囲内かあるいは それ以上の磁場強度をもっていたことを示唆しており、太古代前期の終りには 核内にまだ活発な熱対流が存在していた可能性を示している。