第243回 | |
日時 | 平成14年9月25日(水)17:00より |
場所 | 東京工業大学理学部地球惑星科学教室会議室 石川台2号館315号室 |
講演者 | 寺崎治(東北大学大学院 理学研究科 物理) |
講演題目 | 原子およびメソスケールの規則性を有する新奇物質とその構造解析上の問題 |
内容、 | シリカメソ多孔体は、通常次の二方法; (i) 層状シリケートに界面活性剤をイオン交換して[文献1,2]、あるいは (ii) 水−界面活性剤−水溶シリカ塩系[文献3,4] で合成され、ゼオライトで準備できないより大きな反応空間を与える物質系として、様々な分野の興味を惹いてきた。 その構造上の特徴は、「人工原子基」の空隙が周期的に配列した新しいタイプ結晶であり、その空間を実際に保持するシリカの壁はアモルファスシリカである。 これまで、物質の構造は固体結晶、液体・気体構造(二体動径分布プロファイル)であれ、原子間距離のスケールで議論され、その為の構造解析手法はシリカメソ多孔体には無力であった。 本セミナーでは、シリカメソ多孔体の3次元構造を電子顕微鏡像から求める我々の解析手法[文献5,6]を以下の内容を含んで紹介し、議論する。 (i) 水−界面活性剤系の状態図と、界面活性剤が示す自己組織、 (ii) シリカメソ多孔体の代表であるMCM-41 およびMCM-48[文献5,7] 、 (iii) シリカメソ多孔体を鋳型に作製された新奇な物質[文献7,8]、 (iv) Hybrid organic-inorganic メソ多孔体[文献9]、 (v) 新奇「ナノ構造体」を構造解析する上での問題点[文献8]。 なお、時間の関係で触れないが(v) を解く一つのアプローチを挙げておく[文献10]。 文献 1. The preparation of alkyltrimethylammonium-kanemite complexes and their conversion to microporous materials, T. Yanagisawa, T. Shimizu, K. Kuroda & K. Kato; Bull Chem. Soc. Jpn. 63(1990), 988-992. 2. Synthesis of highly ordered mesoporous materals, FSM-16, derived from kanemite, S. Inagaki, A. Koiwa, N. Suzuki, Y. Fukushima & K. Kuroda; Bull. Chem. Soc. Jpn. 69(1996), 1449-1457. 3. Ordered mesoporous molecular sieves synthesized by a liquid-crystal template mechanism, C.T. Kresge, M.E. Leonowicz, W.J. Roth, J.C. Varutuli & J.S. Beck, Nature 359(1992), 710-712. 4. A new Family of Mesoporous Molecular Sieves repared with Liquid Crystal Templates, J.S. Breck, J J.C. Vartuli, W.J. Roth, M.E. Leonowicz, C.T. Kresge, K.D. Smitt, C.TW. Chu, D.H. Olson, E.W. Sheppard, S.B. McCullen, J.B. Higgins & J.L. Schlenker; Am. Chem. Soc. 114(1994), 10834-10843. 5. The structure of MCM-48 determined by electron crystallography, A. Carlsson, M. Kaneda, Y. Sakamoto, O. Terasaki, R. Ryoo & H. Joo; J. Electron Microscopy. 48 (1999), 795-798. 6. Direct Imaging of the Pores and Cages of three-dimensional Mesoporous Materials, Y. Sakamoto, M. Kaneda, O. Terasaki, D.Y. Zhao, J.M. Kim, G. Stucky, H.J. Shin & R. Ryoo; Nature 408 (2000),449-453. 7. Structural Study of Mesoporous MCM-48 and Carbon Networks Synthesized in the Spaces of MCM-48 by Electron Crystallography, M. Kaneda, T. Tsubakiyama, A. Carlsson, Y. Sakamoto, T. Ohsuna, O. Terasaki, S.H. Joo and R. Ryoo; J. Phys. Chem. B106 (2002), 1256-1266. 8. EM study of novel Pt-nanowires synthesized in the spaces of silica mesoporous materials, O. Terasaki, Z. Liu, T. Ohsuna, H.J. Shin & R. Ryoo; Microsc. Microanal., 8 (2002), 35-39. 9. An ordered mesoporous organic-silica hybrid material with a crystal-like wall structure, S. Inagaki, S. Guan, T. Ohsuna and O. Terasaki; Nature 416 (2002), 304-307. 10. Atomic resolution 3D electron diffraction microscopy, J. Miao, T.Ohsuna, O. Terasaki & M. A. OユKeefe; Phys. Rev. Lett. online (7 October, 2002 issue) . |
今回の地惑セミナーは、寺崎先生にお越しいただき今ホットなナノ工学(学問)の複雑怪奇な、
だからこそ興味深い世界について講演していただきました。先生は、シリカメソ多孔体の
三次元構造をどのように把握するかということについて実験的に研究しています。シリカメソ多孔体の内部には
ナノスケールの空隙があり、しかもそれらがある規則正しい配列を有している物質です。
その空隙を利用することによって、ナノスケールの構造体を作ることができ、講演の中では
Ptをシリカメソ多孔体に流し込むことによって作った数ナノの白金棒を紹介してました。
ナノスケールの構造体(例えば、炭素のナノチューブなど)は今後電子機器に限らずあらよる
分野において利用され、応用されていくと思われます。そういった意味で、
シリカメソ多孔体に関する基本的なデータや解析手法を与えるこの研究は重要であり、やり応えの
あるものだと感じました。
さて、講演全般に関する感想ですが、途中でかなりマニアックな話が
あったのは否めませんが、全体としてはわかりやすく、また講演を通して寺崎先生が感じている
この研究の面白さを我々も知ることができました。やっぱり自分の研究を話す以上、聴衆に対して
自分のやっている研究の面白さを伝えたいと思いますし、逆に聞くほうとしても伝わってこなければ
退屈でしょうがないのではないでしょうか?そんな意味からも今回の講演は大変うまく、
勉強になりました。