第244回 | |
日時 | 平成14年10月2日(水)17:00より |
場所 | 東京工業大学理学部地球惑星科学教室会議室 石川台2号館315号室 |
講演者 | 小野重明(IFREE, 東工大地惑) |
講演題目 | 高温高圧発生装置を用いた下部マントル物質の探求 |
内容、 | これまで、下部マントルをターゲットとした実験的研究の大部分は、 下部マントルに存在する物質を単純化したものを扱っていた。 例えば、MgSiO3ペロフスカイトなどが代表的なものである。しかし、 現実の下部マントルを構成する鉱物は、はるかに複雑な化学組成を 持ち、単純な組成の鉱物では表現することのできない物性を持つ 可能性がある。下部マントルに相当する温度圧力を発生しうる装置 としては、レーザー加熱式ダイヤモンドアンビルセルがしばしば用い られるが、この装置は、温度圧力の精密な制御が難しく、実験試料も 非常に小さいため、天然の複雑な化学組成に関する定量的な議論は 困難であった。しかし、近年の実験技術の進歩により、天然の化学 組成をもった岩石を扱うことが可能になり、我々のグループでは、 地震学から観測される下部マントルについてのデータと、直接、 比較できる精度を持った実験データを得つつある。そこで、本講演 では、下部マントルを構成している可能性のあるペリドタイト(KLB-1) と下部マントルまで沈み込んでいると考えられている海洋地殻 (MORB)についての最近の実験データを紹介し、下部マントル中の 層構造やダイナミクスを議論する。 |
第244回の地惑セミナーは、海洋科学技術センター・IFREEの小野重明先生に、
「高温高圧発生装置を用いた下部マントル物質の探求」という題目で講演して
頂きました。
「沈み込んだ海洋地殻はマントルのどのあたりまで潜り込むのか?」という
疑問をはじめとして、地球の内部構造に関しての議論は活発に行われています。
地球内部の構造を知るためには、地球内部を構成している物質の化学組成だけ
ではなく、それらの結晶構造についても明らかにしなければなりません。本講演
では、ダイヤモンドアンビルセルを用いて地球内部の高温・高圧環境を実験室
内で再現し、その結果推測される下部マントルの構造やダイナミクスについて
紹介して頂きました。
小野先生の講演は、実験原理や装置に関する基礎的な部分からわかりやすく
説明されていて、興味深く伺うことができました。簡潔にまとめられていて
なおかつわかりやすかった今回の小野先生の講演は、同じ実験系の人間として
大変参考になりました。