第247回
日時 平成14年12月4日(水)17:00より
場所 東京工業大学理学部地球惑星科学教室会議室
石川台2号館315号室
講演者 木多紀子 (産総研地球科学情報研究部門)
講演題目 コンドリュール年代と原始太陽系星雲の進化について
内容、 未分化な隕石の中に存在するmmサイズのコンドルールは、珪酸塩を主体とする塵が原
始惑星系円盤中で高温に加熱されてできたとされる球粒である。コンドルールに残さ
れた26Al(半減期73万年)の痕跡を壊変生成物である26Mg同位体の過剰から調べ、形
成時の初生26Al/27Al同位体比を推定することにより、コンドルール相互の相対年代
を数十万年の精度で求めることができる。その結果、コンドルールの形成は太陽系形
成から100-250万年の幅を持っており、天文観測から推定される若い星の周りに塵を
含む円盤が存在する時間スケールと一致する。また、個々のコンドルールのバルク組
成は年代が若くなるにつれ、Si, Mn, Na等揮発性のやや高い元素が濃縮していた。こ
れらの結果から、コンドルール形成環境は原始惑星系円盤中の固体粒子が沈澱した赤
道面の上方であり、その中で固体物質の揮発性に依存した化学分別が時間とともに進
行したというモデルを提唱する。

地惑セミナーの写真、講演に対するコメント


今回は産総研の木多先生に「コンドリュール年代と原始太陽系星雲の進化について」という題目でお話をしてもらいました。実験屋である木多先生は、理論家である筑波大学の中本先生と組み、コンドリュールの形成モデル解明にむけ研究を続けています。今回提唱された新しいコンドリュール形成モデルを聞いて、お互いが相補的な役割を担いながら進めていく研究スタイルが非常に効率的であるということを再認識しました。東京工業大の地惑はその点、様々な分野、様々な研究スタイルの人が交流しやすい組織を持っており、恵まれているなと思いました。(思った後に何をするか?これが問題ですが)講演の内容もさることながら、研究スタイルについても考えさせられる、すばらしい講演でした。
 木多先生、本当に講演ありがとうございました。
著:今居創