第248回
日時 平成14年12月18日(水)17:00より
場所 東京工業大学理学部地球惑星科学教室会議室
石川台2号館315号室
講演者 藤井靖彦(東工大原子炉研)
講演題目 質量に依存しない同位体効果
内容、 原子炉の燃料となるウランは天然235U濃度0.7%から3 - 4%に濃縮している。濃縮
ウランを作る方法は遠心分離やガス拡散などであるが、化学反応を使う濃縮(同位体
分離)法の研究が行われた。そこでは不思議なことに、U(IV)とU(VI)の間で軽い同位
体が6価イオンUO22+に濃縮することが分かった。この原因を追及してゆくと偶数質量
のウラン同位体は質量に比例する同位体効果を示すが、奇数同位体は質量比例の関係
からずれることが分かり、このパターンは核の電荷密度の項と非常に似ていることが
分かった。電子状態が変化する化学系では核の質量ではなく「大きさ」が同位体効果
に影響する。このような例はほかに見られる。希土類元素の中のガドリニウム、鉛,
Pb(II),についても有機錯体の同位体効果を調べるとやはり、核の大きさが影響して
いる。鉄,Fe(II)-Fe(III),酸化還元平衡においても核の大きさが同位体効果に影響す
ることがわかった。電子状態の同位体効果について定量的な解析は今後の課題である。

地惑セミナーの写真、講演に対するコメント



第248回の地惑セミナーは、東工大原子炉研の藤井靖彦先生に「質量に依存しない
同位体効果」について講演して頂きました。
同位体分離の手法には、アマルガムを用いる方法・錯体を用いる方法
などいくつか存在するのですが、藤井先生はイオン交換の手法で同位体分離の
実験をしておられます。今回の講演では、そのような同位体分離実験を通して得
られた、偶数質量数の核種と奇数質量数の核種とでは振る舞いが異なるなど、
非常に興味深い実験結果についてお話ししてくださいました。
藤井先生は原子炉研の所長も務められているのですが、お忙しい中、非常に素晴
らしい講演をしてくださいました。藤井先生、どうもありがとうございました。