第255回 | |
日時 | 平成15年7月16日(水)17:00より |
場所 | 東京工業大学理学部地球惑星科学教室会議室 石川台2号館315号室 |
講 演 者: | 中嶋 悟
(東工大 理工学研究科 広域理学講座(理学研究流動機構)) |
講演題目: | 有機無機相互作用と生命の起源 ー生命化学進化のエネルギーと時間スケールー |
内容: |
地球上の原始生命は,約40-35億年前に水の中で生まれたと想像されている.
従来,原始生命の原材料である有機分子の生成過程は,有機低分子に高エネル
ギー電磁波(紫外線や加速粒子)や電気火花等を与える実験から研究されてきた.
これらは惑星空間では起こりえるが,地球の水の中では極めて想像しにくい過
程である.一方,タンパク質やDNAなどの生体高分子の生成進化過程は,生化
学的な酵素反応などから研究されてきた.しかしながら,この2つの間に存在
する有機原材料分子が生体高分子まで進化する過程については,殆どよくわかっていない. この有機分子の重合過程は自発的ではないため,外部からの熱力学的エネルギーの 供給が必要である.そこで,ここでは地球の水圏に存在する非晶質水和無機物(コロ イド状のシリカや鉄の沈殿物等)が自発的により結晶性の高い鉱物へと進化する過程 で放出する熱力学的エネルギーを利用する可能性に注目する.すなわち,有機物と無 機物が有機無機相互作用により「共進化」し,生命の原材料分子を生成する可能性 を,主に熱力学,反応速度論と実験を組み合わせて検討する. 有機無機相互作用は,地球表層環境では頻繁に起こっており,地球表層物質循環に も大きな影響を及ぼしている.さらには,地球の水圏に増えつづける人工的な有機汚 染物質(有機塩素化合物や環境ホルモンなど)が土壌や岩石の構成物質(鉱物)とど のような反応を経て変化していくかという環境汚染の長期予測にも有機無機相互作用 の研究は重要である. |