第261回  
日時 平成16年1月28日(水)17:00より
場所 東京工業大学理学部地球惑星科学教室会議室
石川台2号館315号室
講 演 者: 講演者:今村 剛 氏 (JAXA宇宙科学研究本部)
講演題目: 惑星大気大循環論と金星気象学
内容: 大気の循環は、エネルギーや化学物質を惑星全体に分配し、また 雲生成を介してアルベドを変化させることによって、惑星の気候 の形成に深く関わっている。近年、地球の大気大循環の数値計算 技術が大きく発展したが、その一方で未解決の本質的な問題も多 く残されている。そのため我々は、惑星大気の多様な姿や遠い時 代の地球気候を統一的に説明できる段階にはない。理解が滞って いる理由としては、我々は現在の地球という限られたサンプルに ついてしか詳細な調査が許されておらず、そのためパラメータ空 間内での比較による実証的なアプローチが困難であったことが挙 げられる。

講演ではまず、地球の大気大循環が未だ理解の途上にあることを 論じる。そのあと、日本の気象学コミュニティーを中心として近 年活気を見せている金星気象学の研究の動向を紹介する。大変ユ ニークな力学状態にある金星大気を理解しようとする試みの中で、 大気力学の基本原理に関する新たな視点が得られつつあることを、 感じとっていただけるであろう。さらに、日本で進行中の金星探 査計画を紹介したい。この探査計画は、金星の大気運動を徹底し て広帯域でサンプルすることによって、比較惑星科学的手法によ る大気大循環論の研究に新たな道筋をつけようとするものである。
金星探査計画ホームページ:http://www.stp.isas.jaxa.jp/venus/