第266回  
日時 平成16年7月14日(水)17:00より
場所 東京工業大学理学部地球惑星科学教室会議室
石川台2号館315号室
講 演 者: 新村 裕昭 氏 (東京大学地震研究所)
講演題目: 発泡したマグマのガス浸透性の開始条件とバブル形状との関係
内容: 揮発性成分を含んだマグマのガス浸透性の発達は、火山の噴火時の脱ガス過程を左右 する重要なパラメータである。脱ガスとはマグマの上昇中にガスがさきに外部へ排出 されることであり、その過程が効率的なほどガスの急激な膨張によるマグマの破砕を 抑制し、噴火は穏やかになると考えられている。一般に浸透率は気相の体積分率φに 依存して大きくなることが知られているが、浸透性を獲得し始める体積分率の閾値 φcが、バブルの形状に影響されることが近年の火山岩の浸透率の計測や、数値計算 から示されている(Saar and Manga, 1999; Blower, 2001)。つまり、全てのバブルが 揃った方向に伸びた形状を示す場合、その方向の浸透率は増加し、それに直交する方 向の浸透率は減少する。この効果はφがφcに近いとき、とくに顕著となる。
本研究では解析的にこの現象、つまりφcがバブルの形状(アスペクト比)λにどの ように依存するかを調べ、その関係式を得た。結果として、φcのλ依存性は系のサ イズLに依存しており、無限の空間をとったとき、有限なλを持つバブルの系ではφc は異方性を示さなくなること、有限サイズの系においては、λの対数を底にした冪乗 の関数 (lnλ)^α, αは定数, で表されることがわかった。過去の研究事例で示され たφcのλ依存性は、有限サイズの効果を示していることになる。また、噴火時の火 道内部は、火道中心から火道壁方向にむかってずり応力分布が存在し、バブルの変形 の程度が異なっている可能性が高い。その変化は有限の長さでおこるので、火道内部 で浸透性を獲得し始める条件は、バブルの体積割合だけでなくバブル形状にも影響さ れている可能性が高い。