第277回  
日時 平成16年6月29日(水)17:00より
場所 東京工業大学理学部地球惑星科学教室会議室
石川台6号404号室
講 演 者: 杉山 徹 氏 (海洋研究開発機構 JAMSTEC)
講演題目: 連結階層シミュレーションと可視化装置の紹介
内容: 「連結階層シミュレーションアルゴリズムの開発」

地球シミュレータでの計算例として、降水量のシミュレーションや、宇宙空間のプラズマのシミュレーションがあります。その計算モデルの1つとして、媒体を流体として扱いシミュレーションを行っています。たとえば、降水量のシミュレーションでは、地球を一辺10キロの格子で、磁気圏のシミュレーションでは、地球半径程度の格子で分割しています。

ところが、本来、水蒸気から雲の出来る過程を再現しようとするとミクロン単位で、電子とイオンの運動の違いから生じる電流や電磁波を再現しようとするとメートル単位で、個々の粒子の運動を計算しなければ答えが出ません。しかし、たとえば地球を1ミリ格子で分割するには地球シミュレータの1兆の1000万倍のパワーが必要です。コンピュータの性能をここまで向上させるのは、いかなる方法を用いても不可能です。

私たちは、連結階層シミュレーションでそれを実現しようと考えています。地球シミュレータのようなコンピュータを2台使って計算するのです。1台は、マクロな世界専用の計算機、もう一台は、ミクロな世界専用の計算機で、同時実行しつつ、各計算の情報も取り入れられるプログラムを開発して、接続するのです。これを連結階層シミュレーションと呼んでいます。現在、接続部分のプログラムを開発中で、同時にそのプログラムを実行する「連結階層シミュレータ」の開発の検討が始まりました。本日は、具体的な物理現象の議論ではなく、シミュレーション科学の概念をお話したいと思います。

「可視化手法の研究」

地球シミュレータ・バーチャルリアリティシスムBRAVEは、左右、正面、床の4面の巨大なスクリーン(3m×3m)上に、それぞれ異なった角度からの画像を映し奥行きを作り、その中に入った人間には立体として感じられるように再現する可視化装置です。シミュレーション結果をこの装置を用いて表現し、平面モニターでの立体表示では得られなかった現象の発見に役立っています。