日時 平成18年 3/16(木) 17:00から
講師 吉澤 和範さん
北海道大学大学院 理学研究科
地球惑星科学専攻 グローバル地震学研究室 助手
講演タイトル 表面波による上部マントル3次元イメージングの最前線
  −−有限波長トモグラフィー法によるアプローチ−−
要旨 地震表面波は地球内部、特に上部マントル内部の不均質構造を イメージングする上で有益な情報である。
1980年代以降、グローバル からリージョナルまで様々なスケールでの表面波トモグラフィーによる 上部マントル構造の研究が行われている。

対象となるスケールに関わらず、従来のトモグラフィー法は、 波線理論に基づく手法が主流であった。
高周波近似(または ゼロ波長近似)に基づく波線理論は、波長よりもずっと大きなスケールの不均質性の復元には有効な近似である。
しかし、 最近の高分解能なリージョナルトモグラフィーでは、波長と 同程度のスケールの顕著な不均質性の存在も示唆されており、単純な波線理論に基づく手法だけでは限界に達した感があった。

近年、実際の地震波伝播における有限波長の影響まで考慮した 新しいトモグラフィー法に関する理論的研究が発展し、最近では、これらの新しい手法に基づく有限波長トモグラフィーモデルが、徐々に提唱されるようになってきた。

本講演では、表面波から3次元的なS波速度分布を復元する方法 の基礎から、最新の有限波長トモグラフィー法の概要について解説するとともに、オーストラリア周辺域やフィリピン海域を例として、新手法を利用した最新のリージョナルトモグラフィーによる 3次元速度構造や異方性分布なども紹介する。