広帯域MT法による北アナトリア断層帯西部域深部比抵抗構造
本蔵義守1,大志万直人2, 松島政貴1, 高橋 太1, 中西無我1,吉村令慧2, Serif Baris3,Mustafa K. Tuncer3, Ahmet M. Isikara3,S. Bulent Tank3, Cengiz Celik3,Tolga Komut,Riza Pektas3
1東京工業大学 大学院 理工学研究科 地球惑星科学専攻
2京都大学 防災研究所
3ボアジチ大学 カンディリ観測所・地震研究所
トルコ共和国の北部を東西に走る北アナトリア断層帯では,
1939 年に起きたM7.9 のエルジンジャン(Erzincan)地震以後,
震源を西へ移しつつM7 クラスの大地震を起こしてきた.
一連の活動のうちの最後,1967年のムドゥルヌ(Mudurnu)地震の西側は,
いわゆる地震空白域として注目されていた.
そして,1999年 8月17日,ついにM7.4 の地震が起こり莫大な被害をもたらした.
この地域では,北アナトリア断層は南北に分岐していることが知られている.
これまでの研究から,
地震活動は南のブランチよりも北のブランチにおいて高いことがわかっている.
本研究の目的は,地震空白域において,地震活動度が異なる2つの活断層に対し,
その深部構造を明らかにすることによって,
断層近傍の水の流動と地震活動との関連を含め,
地震発生に至る過程に断層近傍の不均質構造が
どのようにかかわっているかを明らかにすることである.
ここでは広帯域(周期 0.01 〜 1000 秒)MT観測装置を用いて,
北アナトリア断層帯西部域の南北のブランチを縦断する測線を取り,
活断層近傍の比抵抗構造を求める.
測定には GPSで時刻同期した5台の広帯域MT観測装置(Phoenix MTU-5)を用いた.
1999年 7月28日から観測を始め,9月末まで続けられる予定である.
南のブランチ周辺での観測では,5台の装置すべてを観測点に設置した.
北のブランチ周辺は工業都市部に近いのでノイズレベルが上がる.
そこで1台の装置をリモートレファレンス処理をするための観測点
(観測の基地となったイズニック周辺)に設置した.
8月17日現在で,参照点を除き,観測点の数は22である.
予備的な結果ではあるが,
南のブランチ周辺では低比抵抗が深度 1 kmまでの浅部に見られる.
一方,南北ブランチの中央から北のブランチにかけては,
深度数 km に低比抵抗異常が見られる.
2次元インバージョンなどを行い,比抵抗分布を求め,地震活動との関係を調べる.
25 October 1999