第297回

日時 平成19年7月4日 水曜日 午後5時より
場所 東京工業大学 石川台6号館 404号室  
<講師> 青木 勝敏 先生 (日本原子力研究開発機構 放射光科学研究ユニット)
<題名> 「氷の超高圧状態の実験的研究‐100万気圧下での水素結合対称化研究の道程‐」

水は人間にとって最も馴染みのある物質である。水素結合系の典型的な物質でもあり、その結晶である氷は水素結合の柔軟性を反映して多様な結晶構造を示す。後にノーベル賞の受賞対象となったBridgmanの高圧相の発見以来、氷は高圧研究において常に主要な研究対象であり続けている。研究の大半は「新しい氷」の発見を目指したものであるが、10万気圧までの圧力領域で発見された氷の結晶構造は、水分子が水素結合によって四面体に配置した基本構造を保持しており、10を超える結晶相の発見にもかかわらず、新奇な構造、結合状態は観測されていなかった。

本セミナーでは100万気圧領域での氷の水素結合対称化の観測を目指した高圧研究の軌跡を紹介するとともに、今後の氷の高圧状態研究の方向性を提示したい。プロトンが隣接する酸素原子間の中点に位置する、水素結合対称化は水素結合の消失過程でもあり、プロトントンネリングによる量子力学的対称化を経ての古典的な対称化への移行は固体物理にとっても興味深い研究対象である。


Last-modified: 2007-06-27 (水) 19:41:49 (6142d)