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第315回 †
日時 平成20年12月3日 水曜日 午後5時より
場所 東京工業大学 石川台6号館 404号室
<講師> 横山 央明 先生 (東京大学 理学系研究科 地球惑星科学専攻)
<題名> 「乱流的リコネクションの3次元 磁気流体シミュレーション - 太陽大気磁気爆発現象フレアへの応用をめざして -」
磁気リコネクション(磁力線つなぎかえ)は、太陽高温大気コロナでの
爆発現象フレアや、定常的加熱現象(いわゆる「コロナ加熱」)における
エネルギー解放の重要な物理機構であると考えられている。
地球の磁気圏太陽風接触面や磁気圏尾部で発生している証拠があり、
また遠方天体のパルサー星雲風などでも起こっていると考えられていて、
天体高温プラズマの基礎的エネルギー解放現象として認知されている。
しかし、このリコネクションについては、ミクロ物理とマクロ物理とを
つなぐという、物理的に未解明な課題がのこされている。
太陽コロナは、高温(数百万K)であるために電気伝導性がよい(磁気拡散が小さい)。
いっぽうフレアの空間スケールが巨大(数万--数十万km)であるために、
磁気拡散時間のAlfven運動時間に対する比である磁気Reynolds数が極端に
大きい(典型的に10^{13})。そのため磁力線のつなぎかえが起こる
領域すなわち磁気拡散領域と、フレア全体との間には大きなスケールの違いが生じる
(高い粘性Reynolds数環境における境界層と流れ全体とのスケールの違いと
似た理屈)。磁気拡散は
プラズマ運動論的スケール、たとえばイオンジャイロ半径
(コロナでは数メートル)で起こると考えられていて、これと
フレア全体とを接続する物理を明らかにする
必要がある。一般には多数の磁気流体乱流がその中間スケールをつないでいると
考えられている。つまり、フレア全体のスケールから拡散スケールまで、
べき乗分布的に乱流渦や磁気島(閉じた「O」字型の磁力線構造)が生成している
というアイディアが提案されている。
講演では、この課題についてわたしたちが取り組んでいる、
磁気流体数値シミュレーションによる研究について紹介する。
究極的には、リコネクションにおける磁気流体乱流効果の理解をめざして
いるが、めざす山ははるかに高く、途中経過についておはなしすることになる。
また、2006年9月に打ちあがった太陽観測衛星「ひので」の成果について
いくつか関連ある話題を紹介したい。