第318回 †
日時 平成21年6月10日 水曜日 午後5時より
場所 東京工業大学 石川台6号館 404号室
<講師> 宇佐見 義之 先生 (神奈川大学工学部物理学教室)
<題名> 絶滅した生物の生態をコンピューターで再現する。 [恐竜は重くて走れないか? & カンブリア紀の生物達]
[話題1]
「大きな恐竜は重くて走れない」、という話を聞いたことがあるかも
知れない。これはハッチンソンらが2002年に発表した論文から広まった
話であるが、実際の論文の内容は、重いので”速くは”走れない、
というものであった。筆者らが力学シミュレーション及び、文献による
生体パラメーターを再検証したところ、10m/s程度、すなわち、ほとんどの
人間よりも速く走れる可能性を否定できないことが明らかとなった。
[話題2]
5億年前のカンブリア紀のアノマロカリスがどのように泳いだか、
また、何故あのようなヒレの形に進化したか、流体力学のシミュレーション
を行った。 その結果、節足動物から進化したアノマロカリスは
水中での遊泳に適応する為、バラバラのヒレを一つのシート状に
発達させ、それを波打たせるように動かしたらしい、ということが
わかった。
水中で遊泳する生物にとっては、生物自体の進化の原動力よりも、
”水”という物質の性質が、形の進化を大きく規定していると考えられる。