第330回

日時 平成22年6月23日 水曜日 午後1時30より
場所 東京工業大学 石川台2号館 318号室 
<講師> 沖野 郷子先生  (東京大学 大気海洋研究所)
<題名> 海洋デタッチメント断層:大規模正断層は海底拡大プロセスと熱水循環系を支配するか?

中央海嶺は発散型のプレート境界(=海底拡大の場)であり、新しい海洋性地殻・リソスフェアが形成され、地球の物質・熱循環に大きな役割を果たしている。中央海嶺における火山活動や断層運動の様式、マントル上昇のパターンや生成される海洋性地殻の構造が海底拡大速度によって大きく異なることは早くから知られており、中央海嶺プロセスの拡大速度依存性は80年代以降の中央海嶺研究における共通認識であった。しかし、90年代後半から、中央海嶺の多様性を決めているのは拡大速度そのものではなく、拡大速度とメルト供給のバランスであることが次第に明らかになってきた。例えば、拡大速度が遅くとも、ホットスポット近傍の中央海嶺では高速拡大海嶺型の構造を示し、メルト供給量が多いことを示す厚い地殻を持つ。逆に、拡大速度に比してメルト供給量が少ない環境では、大規模な正断層が発達して深部地殻・マントル物質を海底に露出することで海底拡大が担われている例が次々報告されてきた。このような大規模正断層を海洋デタッチメント断層と称するが、最近の研究によるとこの断層は拡大プロセスや海洋性地殻の構造に大きく影響するだけでなく、熱水活動やひいては熱水周辺の生態系にも大きく関与することが明らかになりつつある。今回の講演では、実際に観測を行ってきた海洋デタッチメント断層の実態を何例か紹介し、そのうちインド洋海嶺三重点付近のデタッチメント断層群と熱水活動の関係について議論する。


Last-modified: 2010-06-15 (火) 02:31:37 (5058d)