第342回

日時 平成23年6月15日 水曜日 午後5時より
場所 東京工業大学 石川台2号館 318号室 
<講師> 黒川 顕 先生   (東京工業大学大学院 生命理工学研究科 生命情報専攻 教授)
<題名> ゲノムからメタゲノムへ

細菌は地球上のあらゆる環境において,多種多様な個体が群集を形成し棲息することで,その環境における物質循環の基盤を担っている.したがって,ある環境の生態系を理解し,生物間の相互作用や物質循環のプロセスをモデル化するためには,環境中の細菌群集についての詳細な理解が必須となる.しかしながら,環境中の細菌のほとんどは培養することが困難なため,群集を構成すある種の組成はもちろんのこと,それらの生態や機能については未解明な部分が多い.

コンピュータの発展ならびに超高速シークエンサーの登場により,これまで全体像の理解が困難であった自然界における遺伝子動態を,環境中に存在する微生物を群集まるごとゲノム解析するメタゲノム解析により理解できる時代に突入した. ヒトメタゲノム研究では,病気との関連性が最重要課題となり,特定の遺伝子発見のみならず,創薬や健康食品開発,プロバイオティクスなど,健康維持・増進に貢献することが大きな目標となる.同様に,環境メタゲノム情報と環境因子との相互作用を明らかにすることにより,環境を評価するだけではなく,積極的な生命環境デザインが大きな目標となる.そのためには,環境中の遺伝子だけではなく,どのような因子が生命環境において重要であるかを議論した上で,それらを蓄積し将来の基盤とする「地球データベース」を構築することこそが直近の目標になると考えている.

本講演では,現在取り組んでいる新型シーケンサーを利用した土壌メタゲノム解析について紹介する.


Last-modified: 2011-06-11 (土) 10:51:24 (4846d)