第353回 †
日時 平成24年7月18日 水曜日 午後5時より
場所 東京工業大学 石川台2号館 318号室
<講師> 金嶋 聰 先生(九州大学大学院理学府 地球惑星科学専攻 教授)
<題名> 「地球中心核の境界近傍 - 地震波速度構造とダイナミクス-」
地球中心核の境界(CMBとICB)付近の構造に関する最近の研究成果、特に地震学的構造を紹介します。お話しする研究は核内部のダイナミクス、進化、化学組成に対して観測から新たな制約を与える事を目指しています。外核を構成する鉄合金の化学組成には、地球の集積とそれと並行して起きたであろう核形成に関する情報が含まれています。内核・外核境界(ICB)ではこの鉄合金が固化する際に軽元素が液体外核に放出され、より純粋な鉄に近く重い合金が固体内核に沈殿します。この際に解放される重力エネルギーは効率良く対流の運動エネルギーに転換され、ダイナモを駆動する主要なエネルギー源になると考えられます。外核の最下部(F層)やICBの直下には、この固化に伴う特異な構造が形成されている可能性が指摘されています。講演の前半ではこの領域の地震波速度構造について最近の知見をレビューし、私達が行った臨時観測で得られたデータを用いた南極付近のICB近傍のモデルを紹介します。一方、外核最上部に外核主要部分と異なる化学組成を持ち鉛直方向対流の弱い安定成層構造が存在する可能性が、繰り返し示唆されてきました。そこでは、ICBから放出された軽い元素に富む鉄合金流体が浮上・蓄積したり、マントル-核間の化学反応による物質交換が起きたりする可能性があるためです。この問題の解明は、核の化学組成の決定に重要であるのみならず、核のダイナミクス特に核内の対流パターンとダイナモに関して重要な意義を有するため、その解決が望まれます。その様な層の存在をほのめかす観測は、地磁気の永年変化に関連して報告されていますが、私達はこの問題に対し、核マントル境界(CMB)付近を長距離に渡り伝播するSmKS波と呼ばれる地震波を用いて、外核最上部のP波速度を精密に決定しました。講演の後半では、SmKS波の示す観測的特徴や、我々がこれまでに得たモデルについてお話します。