第364回

日時 平成25年6月26日 水曜日 午後5時より
場所 東京工業大学 石川台2号館 318号室 
<講師> 鈴木 建 先生 (名古屋大学 大学院理学研究科 素粒子宇宙物理学専攻 准教授)
<題名> 「太陽の質量損失 --暗く若い太陽のパラドックスとの関連から--」

 標準的な恒星進化計算に基づくと、形成直後に初期の太陽は現在よりも3割程度暗かったという結果が得られる。単純に考えると初期の地球は現在よりも大幅に低温だったと結論される訳であるが、地球には比較的初期の段階から生命の兆候が示唆されており、初期地球における極低温環境を回避するため、効率的な温室効果から重力定数の時間進化(太陽-地球間距離の変化)に至るまで、様々な解決案が提案されている。しかしながら決定的な解決策は無く、さらにこの状況は火星においてはより深刻であり、「暗く若い太陽のパラドックス」として知られている。

 本講演では、解決策の1つである太陽質量の時間変化について紹介する。太陽風による質量放出のため、太陽は日々質量が減少している訳であるが、この質量放出率が十分大きく初期の太陽質量が現在よりも2-3%程度大きかった場合、その光度は標準理論モデルの予測ほどは小さくなく、さらに太陽-地球間距離も現在よりも近くなるため、温室効果ガスなどの影響を考慮せずとも、初期地球の氷点下は回避できることになる。現在の太陽風の質量損失率は非常に小さく、この値に基づくと太陽自体の質量をここまで大きく変化させるには不十分であるが、若い太陽は非常に活動的で質量放出率も100倍程度大きかったことが、他の太陽型星の観測から推察されている。一方で、質量放出率が観測されている太陽型恒星の天体数は多くなく(今後もその数が大きく増える見込みは無い)、太陽風の質量放出率の時間進化を定量的に論じるためには理論面からの検討も必要である。

 講演者らは、磁気流体数値実験を用いて、このような活動的な若い太陽の質量放出のシミュレーションを行い、若い太陽からの急激な質量損失の可能性を定量的に評価した。その結果、太陽風駆動における磁気流体波動を介した強い非線形性により、太陽の表面磁場強度が現在よりも5倍程度強いだけで、現在より1000倍程度大きな質量放出率を持つ高効率な太陽風が吹き出す可能性があり、2%の太陽質量の減少が実現され得ることが分かった。

 


Last-modified: 2013-06-12 (水) 12:51:57 (3050d)