第370回

日時 平成25年11月20日 水曜日 午後5時より
場所 東京工業大学 石川台2号館 318号室 
<講師> 掛川 武 先生 (東北大学 理学研究科)
<題名>「地球が作った生命」

<要旨>

 オパーリンは著書「生命の起源」で「化学進化」の概念を示した。その一方で、パンスペルミア説が普遍化するなど、オパーリンの「化学進化」説と異なった生命誕生シナリオを描く研究者が多くなった。しかしオパーリンの「化学進化」説に「地球」というファクターを考慮すると、地球に生命が誕生した理由が実証的かつ合理的に説明しうる。東北大ではオパーリンの「化学進化」説に地球というファクターを取りいれ3つの実験を行っている。1つ目の実験は後期隕石重爆撃を想定した実験である。超高温高圧状態下で大気、海水、鉱物が反応することでアミノ酸を含む有機分子ができることを世界に先駆けて示した。こうしたアミノ酸などの有機分子を生体高分子に変換するためにはエネルギーと脱水が必要になる。初期地球の海洋深部で地熱をエネルギー源にし脱水反応が促進され、生体高分子が生成されたとする仮説を唱えている。それを実証する実験を行った。その結果、今までの研究者がなしえなかったアミノ酸の重合に高温高圧下で成功した。初期海洋に溶存していた塩も生体有機分子生成に重要である。特にホウ酸はRNAに使われる糖(リボース)の生成とその後の安定化に大きな役割を果たす。東北大で行った実験の結果、ホウ酸塩存在下では、複数ある糖の中でリボースのみが選択的に安定化することが分かった。このことはリボースだけが、なぜRNAに使われるようになったのか説明することになる。これらの一連の実験は、かつての地球で起こった地質学的イベント、そこにあった鉱物や地熱、海洋に溶けていた塩類が、いかに生体有機分子生成に重要であったかを示す。すなわち地球が生命を作ったと言える。


Last-modified: 2013-11-13 (水) 20:10:16 (2896d)