第391回 †
日時 平成27年11月18日 水曜日 17時より
場所 東京工業大学 石川台2号館 318号室
<講師> 黒川 宏之様 様(ELSI)
<題名> 大気散逸と惑星の進化
惑星大気は、恒星からの短波長放射による大気上層の加熱や恒星風によって、宇宙空間へ流出していく。
この現象は大気散逸と呼ばれる。大気の流出率は現在の太陽系惑星においては微量ながら、太陽が活発であった過去においては、大気散逸の影響はより顕著であったと考えられている。また、恒星の近傍をまわる短周期系外惑星においては、誕生後数十億年が経過した系においても、大量の大気の流出が観測されている。この大気散逸現象は、惑星の表層環境に影響を与えるのみならず、極端な場合、惑星の質量やバルク組成をも変えてしまう場合がある。
本講演では、大気散逸現象について簡単なレビューをしたのち、大気散逸が惑星に影響を与えてきた例として、講演者らが近年行ってきた、火星と短周期系外惑星の研究を紹介する。
火星については、大気散逸理論と火星隕石の分析・火星探査から得られた揮発性元素同位体比の測定データから、火星の大気と表層水量の時間進化について議論する。短周期系外惑星については、大量の大気散逸による暴走的な質量流出現象の理論研究から、惑星質量の時間進化や系外惑星の分布への影響について議論する。