第406回

日時 平成29年07月26日 水曜日 17時より
場所 東京工業大学 石川台2号館 318号室 
<講師> 関根 康人 先生(東京大学大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻 准教授)
<題名> 初期火星に酸素大気?室内実験から迫る火星の古環境

 火星の古環境の理解は、そこでの生命存在可能性のみならず、広く  地球型惑星の表層進化の理解に対しても重要なアンカーを与える。近年の  火星探査車キュリオシティーによって、かつて液体の水が存在したゲイル  クレータ―内の湖の水の化学的性質が明らかになりつつある。本研究では、  湖底堆積物中に見つかったマンガン酸化物に着目し、その微量元素濃集パ  ターンから、マンガン酸化物の価数や堆積した当時の酸素分圧を室内実験  に基づき制約する。  その結果、火星上で見つかったマンガン酸化物は MnO2 であり、必要な酸  素分圧は 数 mbar 以上と見積もられる。一方、マンガン炭酸塩ができない  ためには大気 CO2 分圧は酸素分圧の 1/10 以下となる必要があることが  示唆される。  ゲイルクレーター内に湖が存在していたのは、37~35億年前であり、本研  究の結果は、地球の大酸化イベントに10億年以上先んじて、火星には酸素を  主成分とする大気が存在していた可能性があることを示唆する。本発表では、  このような酸素大気が形成・維持される条件や、そのような大気を持つ初期  火星におけるエネルギー論的なハビタビリティ、また、より一般的な地球型  水惑星の表層酸化還元状態の進化についても議論したい。


Last-modified: 2017-07-20 (木) 20:08:54 (2466d)