第415回

日時 平成30年1月23日 水曜日 17時より
場所 東京工業大学 地球生命研究所 ELSI-1ホール 
<講師> 廣瀬 敬先生(東京大学理学系研究科 地球惑星科学専攻 / 東京工業大学 地球生命研究所)
<題名> コアの進化とその産物

 地球コアの進化に関する理解は急速に進みつつある。特に、最近見つかったコアの高い熱伝導率により、「初期地球から内核誕生(約10億年前)まで、コアの熱対流によってダイナモ作用が起きていた」とする従来の考えを見直す必要が生じた。代わりに、MgO (O’Rouke&Stevenson, 2016 Nature; Badro et al., 2016 Nature) もしくはSiO2 (Hirose et al., 2017 Nature)がコア中で結晶化することによって、コアの対流とダイナモが初期地球より維持されてきたとする、2つの似た(しかし異なる)考えが提唱された。そこでわれわれは最近、シリコンと酸素に加え、マグネシウムを含む液体鉄の融解実験を高圧下で行い、熱力学モデルを構築した。その結果、地球がジャイアントインパクトなどの高温イベントを経験していれば、コアの冷却に伴い、固体SiO2に加え、シリケイトメルトが液体金属から吐き出されることがわかった。このことは、1)下部マントル中位の地震波散乱体、マントルの底の超低速度層ULVZ、コア最上部の低速度層、および2)プルームマグマ中に観測される182Wなどの同位体組成異常は、すべてコアの進化の産物である可能性を示唆している。


Last-modified: 2019-01-16 (水) 13:21:12 (1927d)